電流を測るIoTセンサーを無線化してみた

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IoTセンサーのデータを無線で飛ばしたい

tdiグループの1社である当社TDIプロダクトソリューション株式会社(以下、TDIPS)では、モニタリングボックスという製品を提供しています。

このモニタリングボックスと各種IoTセンサーを接続すると、IoTセンサーが取得したデータを測定することができます。そして、測定したデータは、モニタリングボックスから無線 LAN で送信が可能です。そのようにして、パソコンなどにデータを送って、集計結果を確認したり、問題を解析したりします。

ただ、IoTセンサーとモニタリングボックスの間は、ケーブルで接続する必要がありました。

「もしIoTセンサーのデータをモニタリングボックスに無線で飛ばせたら、工場でセンサーが離れた位置にある場所や配線が難しい場所でも、気軽にセンサーを設置できるのに・・・」

そんな想いからセンサーの無線化を進めることにしました。

ちなみに今回無線化をするセンサーは「電流センサー」です。工場では主にモーターの電流測定に使われます。

モニタリングボックスと電流センサー

IoTセンサーの無線通信技術を使用環境に合わせて選ぶ

日本国内では無線通信に使用できる周波数帯域が電波法に定められており、多種多様な通信規格が存在します。そのため、実現したいことを念頭に置いた技術選択が重要です。特にIoTセンサーは様々な場所に設置されることが想定されるため、システム化の際には実際の使用環境を明確にする必要があります。

周波数帯

無線通信で使われる電波は周波数が高い程データ伝送速度が速く、遅い程遠くまで飛ばせる性質があります。電波は何も障害物が無い場合、直進して伝わりますが、障害物がある場合、反射、回折、透過といった現象が起こります。

  • 直接波:送信地点から受信地点まで直接届く電波
  • 反射波:障害物に対して、反射して伝わる電波。波長が短い(周波数が高い)ほど、顕著に現れる
  • 回折波:障害物に対して、回り込んで伝わる電波。波長が長い(周波数が低い)ほど、顕著に現れる
  • 透過波:障害物に対して、反射・回折せずに透過して伝わる電波

一般的に馴染みのある通信規格の無線 LAN では 2.4GHz と 5.0GHz 帯が使われています。2.4GHz 帯の方が障害物に強く伝送速度が遅く、5.0GHz 帯の方が障害物に弱く伝送速度が速いのは、このような電波の特性のためです。

今回は工場での使用を想定しているため、障害物が多いことが考えられます。そうすると、2.4GHz 帯を使用するのが妥当でしょう。

総務省 電波利用ホームページ 「周波数帯ごとの主な用途と電波の特徴 」より

通信距離

無線通信の重要なポイントとなる通信距離は、より長い方が使い勝手が良くなりますが、その分消費電力が大きくなってしまう傾向があります。

今回の設置場所想定は工場なので、通信距離としては数百メートルの範囲をカバーしたいところです。ただ、モニタリングボックスをゲートウェイとして無線 LAN 通信への接続は可能なので、IoTセンサー自体の通信距離はモニタリングボックスに届く範囲で大丈夫です。そのため、IoTセンサーの通信距離は無線PAN程度とし、消費電力のカットを狙うことにしました。

総務省 『子供を見守るICT技術に関する調査検討会 報告書』第2章 ICTをささえる近距離無線通信技術より

通信規格

近距離無線通信の規格として下表のようなものが挙げられます。この中から今まで検討した要件に適合する規格を選びます。

名称 ZigBee Bluetooth Low Energy Bluetooth クラシック 無線LAN
規格 IEEE802.15.4 IEEE802.15.1 IEEE802.15.1 IEEE802.11a/b/g/n
周波数 2.4GHz 2.4GHz 2.4GHz 2.4GHz/5GHz
通信距離 10m~70m 1m~100m 10m~100m 100m~300m
伝送速度 250kbps 1Mbps 3Mbps 11Mbps/54Mbps/300Mbps
消費電力 60mW以下 100mW以下 1000mW以下 3000mW程度
接続数 最大65,536個 最大7個 最大7個 最大32個

先に選んだ周波数帯と通信距離を備えていることに加え、低消費電力であること、スマートフォンやタブレットで標準的に使われており普及率が高いことから Bluetooth Low Energy(以下、BLE)を選択しました。

Bluetooth Low Energy を使った無線化

通信は接続を確立しないブロードキャスト方式としました(ビーコン)。センサーは Broadcaster として周期的に測定データを送信し、モニタリングボックスは Observer としてセンサーからのデータを受信します。これにより通信を簡素化し、以下の効果を狙っています。

  • 低消費電力化
  • 接続数の増大
  • センサー数の柔軟な変更
BLE通信イメージ

BLE を使って無線化することで配線が不要になり、とても便利になりました。ただし、低消費電力とのトレードオフで10m程度の通信距離となり、広い施設や工場では物足りないケースも出てきました。その場合は Observer となるモニタリングボックスを要所要所に設置する必要があります。

BLE のバージョンは現状広く普及している4.2を使用していますが、最新の5.0では通信距離、速度、データ量が向上しています。また、Bluetooth mesh の適用により通信距離を延ばすことが期待されます。

Bluetooth 製品の認証について

Bluetooth の仕様策定、製品認証、普及推進は業界団体である Bluetooth Special Interest Group(以下、Bluetooth SIG) が行っています。

Bluetooth 技術を使った自社製品を販売する場合、Bluetooth SIG メンバー登録(無料)と製品認証・登録(有料)が必要になります。認証にあたっては色々な調査を要し、様々な苦労がありました。製品認証について、詳しくは Bluetooth SIG の Web サイトをご参照ください。

IoTセンサーのお悩みはTDIPSへ

今回、TDIPS製品の無線化についてご紹介させて頂きました。今後も最新の技術動向を追いながら、最適な技術選択を心掛け製品開発に取り組んでいきたいと思います。

IoT センサーを使ってデータ測定したいけど、どうすればいいのかわからない。条件に合ったセンサーが見つからない等、IoT のセンシングにお悩みの方はお気軽にお問い合わせください。

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執筆者プロフィール

Yuguchi Youzou
Yuguchi YouzouTDIPS エンベデッドシステム事業部
入社以来、組み込みシステム、主に車載システムの開発に携わって十数年。
2019年に下回りの閉じた世界からIoTのオープンな世界に飛び込んで奮闘中の毎日です。
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