AWS re:Invent 2019見聞録・前編――AWS注目サービス情報

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はじめに

2019年12月1日から6日まで、アメリカ合衆国ネバダ州ラスベガスで行われたAWS re:Invent 2019(以下、re:Invent)に参加してきました。

多くの学びがあったので、特にお伝えしたいポイントを、前後編の大ボリュームでお届けします。

前編では、その規模、熱気、注目のコンテンツに焦点を当てて紹介します。AWSの新しいサービスや最先端のクラウドサービスで何ができるか気になる方は是非このまま読み進めて下さい。

後編では、グローバルカンファレンスに参加した英語のできないエンジニアである私が、どのようにre:Inventを楽しんだかを実体験100%で紹介します。英語に自信がないけど、海外のカンファレンスに興味がある方必読です!

後編はこちら!>>https://www.tdi.co.jp/miso/aws-reinvent-2019-02

AWS re:Inventとは

re:Inventとは、AWSが1年に1度開催する「学習型カンファレンス」です。開催地はアメリカ合衆国ネバダ州ラスベガスです。

参加者は65,000人以上。日本からの参加者はそのうち約1,700人ほどでした。内容は基調講演(新サービスの発表など)、様々なセッション、ハンズオン、開発者とのトーク、ブース展示などなど。期間中に開催されるセッションの総数はなんと3,000以上

re:Inventとは、AWSが1年に1度、6日間にわたって開催する、まさに、お祭りという言葉がふさわしいイベントです。

基調講演会場の写真です。写っているのは会場全体の1/6ほどですが、それでも人でいっぱいになります。

AWS re:Invent 2019 スケジュール

期間中の私のスケジュールを振り返ったらこのようになりました。

青は移動、オレンジはセッションなどre:Inventの催しに参加していた時間、黄色はユーザーとの交流、緑は自分の時間です。5日あってもすべてを見て回るには時間がたりず、毎日があっという間でした。

私は大阪から参加したので出発してからラスベガスに到着するまで移動時間は体感で24時間以上あったうえ、到着後そのまますぐに前夜祭があったため、初日がとても長かったです。

期間中、参加したいセッションは専用のモバイルアプリで管理できるのですが、仕様上連続した時間のセッションは予約できないようになっています。その理由は、とにかく会場が広すぎて、セッションごとの移動時間がかかるためです。

同じホテル内のセッションでも、フロアやエリアが違うと5分10分移動にかかりますし、違うホテルのセッションに参加しようと思うと、移動に30分かかることもありました。そのため、なるべく同じ(または近い)ホテルのセッションに参加できるよう調整するなど、細かいスケジュール調整を行いました。

また、あらかじめセッションのスケジュールは2800程公開されていましたが、re:Inventの期間中にリアルタイムに400ほど増え、参加者はまさに、その増えたセッション(内容のほどんどは新サービスに関するもの)に参加したいため、スケジュールは何度も変更が必要でした。

参加者もかなりタイトなスケジュールをこなす必要がありましたが、開催側のスケジュール管理の厳密さはそれ以上で、どのセミナーも終了時間が予定より押すことはありませんでした。

AWS re:Invent 2019 注目のサービス

re:InventではAWSの新しいサービスが多数発表されました。その中でも特に現地での注目度が高かったサービスの中からいくつかご紹介します。

Amazon SageMaker関連 

元々AWSには、Amazon SageMakerという機械学習のサービスがあります。今回、そのSageMakerをより扱いやすくするために多くのサービスがリリースされました。

特に、統合開発環境(IDE)である「Amazon SageMaker Studio」や、自動でモデルのビルドや学習を行ってくれる「Amazon SageMaker Autopilot」はこれまで機械学習に興味があってもとっかかりがなかった層のとっかかりになるのではと思います。

AWSのCEOであるAndy Jassyは、

ユーザーは有用な多くのデータを持っていますが、それを活用する手段を持っていません。それを容易にするのが、SageMakerに紐づく様々なサービスです。
ユーザーの、「もっと簡単にML*を使いたい」という要望に応え、SageMakerは1年間で50以上の機能改善がありました。
Amazon SageMakerは、MLのエキスパートでないエンジニアでも簡単にMLに取り組むためのサービスです。

と話していました。

*ML(Machine Learning):機械学習

また、一方で、既に機械学習に慣れているエンジニアにとっては、プラットフォームをクラウドに移してしまうことで、これまで使っていたライブラリが使えなくなるといった問題を抱えることがありました。SageMakerではそのようなエンジニアのために、TensorFlowのみならず、Chainer、PytorchやMXNetにも対応しています。

Amazon Kendra

Amazon Kendraは自然言語検索のサービスです。膨大なマニュアルや過去の問い合わせ履歴から、QAサイトを作る。といった使い方が想定できます。(例えば、「サポートデスクは何時から開いているのか」という質問にも、ちゃんと時間を答えることができる、など)

このような製品は、外部のユーザーのみならず、運用の現場など内部的な需要も多く、様々なシーンで活用できるのではないかと思われます。

現在はプレビュー版としての公開、そして日本語に対応していないため、まだまだ盛んに使用されているわけではありませんが、re:Inventの現地では、発表された瞬間、国内外を問わず大変な盛り上がりとなった注目サービスです。

AWS Outposts

AWSはクラウドサービスでそのサーバは世界各地のデータセンターで大事に運用されています。しかし、ユーザの中には、「どうしても自社にサーバを置きたい」と考える方もいるでしょう。今なお手元のサーバを手放せないユーザーの多くは、低レイテンシーで大量のデータをやり取りしたいという要望を持っています。

画像データを大量に取り込む業務や、金融系のシビアな取引など、どうしても、物理的に距離のあるサーバまでと通信するとパフォーマンスが落ちてしまうシステムがあります。そんなシステムはクラウドを使うことができないのか?その疑問に対する一つの解決策がこのOutpostsです。

このサービスは何かというと、AWSが実際に使っているハードウェアと同じものが搭載されたラックを、ユーザーのオンプレミスの環境に設置できるというもの。中身はAmazon EC2などAWSで使えるサービスとなっており、AWSのデータセンターのサーバを使うのと同じようにウェブコンソールから操作できます。

Amazon DeepComposer

AWSには170を超えるサービスがあり、年々その数は増え続けています。その中には、ユーザーの想像を超えるユニークなサービスもあり、re:Inventでサプライズ的に発表されることが多いです。

今回は、DeepComposerというサービスで、このようなごくごく一般的な電子鍵盤【シンセサイザーのほうがいい?】がお披露目になりました。

※画像はイメージです

この電子鍵盤はあくまでも入力装置。ここに何らかの旋律を弾いて入力すると、伴奏を自動的に作曲してくれるというのが、Amazon Deep Composerというサービスです。

伴奏は、選択したジャンル(Jazz、Classicなど)に合わせた曲調で生成されます。基調講演では檀上で「歓喜の歌」を弾き、それに実際にDeep Composerによって伴奏をつけたものを披露するデモが行われ、その完成度に、会場中から歓喜の声が上がりました。

一見、我々が普段扱う業務システムとは馴染みがない分野のサービスのように思いましたが、Deep Composerをきっかけに、楽しみながら機械学習に親しんでもらいたいという意図があるそうです。

snowflakes

re:Inventでは、AWSを利用したサードパーティの製品やソリューションのブース展示を見学することもできます。サービス、運用、教育など分野は多岐にわたります。トレンドマイクロ、レッドハット、アクセンチュアなど日本にも浸透している企業も多数出展していました。

私が今回注目したのは、Snowflakeというデータウェアハウスのサービスです。このサービスの最大の特徴は、構造化されたデータをAWSのファイルストレージサービスである、Amazon S3に保存することができる点です。

従来のデータウェアハウスは、大量データを保存する場所や保存方法に様々な障害がありました(コスト、可用性、データの持ち方など)。SnowflakeはAWSのファイルストレージサービスであるAmazon S3にデータを保存することができます。Amazon S3はディスクの1/3ほどの価格で使えるうえ、AWSによって自動的にバックアップがとられるため高い可用性があります。

本来、Amazon S3は構造化データの配置を行うことはできませんが、それを独自の技術で可能にしたのがSnowflakeの強みです。

おわりに

私がre:Inventで知ったこと、体験したことの一部をご紹介しました。AWSは先進技術を次々と新しいサービスとして提供するだけでなく、それをユーザーに普及するために大きな学習型カンファレンスを世界中で開催しています。

re:Inventは、「ユーザーが新しい技術やサービスを知る」というだけでなく、使い方を学んだり、どのように活用するかイメージを膨らませたり、AWSを使うユーザー同士のつながりを作るというメリットを提供してくれる場所でした。re:Inventで学んだことや感じたことを、今後社内外にフィードバックしていきたいと思います。

なお、後編ではre:Inventの楽しみ方について書きましたので、このまま後編もぜひご覧ください!!>>https://www.tdi.co.jp/miso/aws-reinvent-2019-02

お問い合わせ先

執筆者プロフィール

Izumi Rika
Izumi Rikatdi デジタルイノベーション技術部
物理からクラウドまで幅広く手掛けるインフラエンジニア。
最近はどっぷりAWSに浸かっています。好きなAWSサービスは「CloudFormation」
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