AWS re:Invent 2019見聞録・後編――英語ができなくても楽しめる

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はじめに

2019年12月1日から6日まで、アメリカ合衆国ネバダ州ラスベガスで行われたグローバルなカンファレンス、AWS re:Invent 2019(以下、re:Invent)に参加してきました。

re:Inventのスケジュールや注目新サービスについてはこちらの前編の記事をご覧ください。

初めて海外に行く、英語ができないエンジニアである私は、参加が決まってからずっと不安だらけの日々を過ごしていました。

そんな私の助けになったのは、過去にre:Inventに参加した様々な先達のブログでした。現地での過ごし方やお得な情報、同じ初めて渡航する人たちの体験記や、ピンチになったらどうしたらいいかなど、現地に行ったことがないとわからない情報を知ることができたり、一番不安なリスクへの備えができでとても心強かったです。

私の記事もそんな風にいつか誰かの助けになったら幸いです。この記事では、どうやって私がre:Inventを楽しんで帰ってきたかをご紹介します。

AWS re:Invent は海外渡航歴がなくても大丈夫?

ここで私自身のステータスをご紹介しておきましょう。以降の記事は、このスキルセットの人間が体験したことという前提でお読みください。
・入社10年弱
・インフラエンジニア
・AWS歴4年程度
・海外経験なし(今回初めてパスポートを取得)
・英語力なし(学生時代は赤点常習)

なかなか不安を感じるスペックです。初海外がラスベガスというあたりがなかなかハードモードだったと自分でも思いましが、それでも楽しめました。

AWS re:Invent を楽しむポイント

re:Inventはとにかく壮大な規模のカンファレンスです。6日間、ラスベガスの6つの巨大ホテルを貸し切って開かれるセッション数は3000以上です。

セッションは基調講演以外に、ハンズオン、開発者と話せるビルダーズセッション、ディスカッションをするチョークトークなど形態も様々。更に、サードパーティの製品やサービスの展示ブースが並ぶEXPOやデモを展示するビルダーズフェアがあります。

学習コンテンツ以外にもMidnight Madnessやre:playのようなパーティ、チキンの早食い大会、早朝ランニング、卓球トーナメントなどの娯楽的なコンテンツも用意されています。

また、毎日メニューが変わる食事や、至る所で提供される豊富な種類の飲み物や軽食、配布されたボトルに自由に給水できる給水ポイントなど、快適に過ごすためのサービスも十分すぎるほどに整っています。そして、AWSが提供するコンテンツ以外にも、ショー、カジノ、グルメ、ショッピングといった観光地としてのラスベガスを楽しむことができます。

では、どうすればその壮大なカンファレンスを、楽しむことができるのか。私なりのコツを3つ紹介します。

コツ1:挨拶

これができないと、re:Inventを楽しむことは不可能です。私はアメリカ以外の国に行ったことはありませんし、ラスベガス以外の都市に行ったこともありませんが、ラスベガスに限定するとしても、挨拶は本当に大事です。

お店に入ったとき、何かの手続きをするとき、目があったとき等あらゆるタイミングで「Hi!」「Hello!」のボールが投げつけられます。それをうまくキャッチボールできずに取り落とし、もごもごと口ごもったりすると途端に不思議な顔をされてしまいます。それではその後のやりとりもよい雰囲気にはなりません。

日本では考えられないほどの頻度で、見ず知らずの人と挨拶をしました。最初の挨拶だけではありません。以下のフレーズは本当に、一日に何十回も言いました。考えるより早く反射で出てくるようになると、コミュニケーションが楽になります。

Hello. Hi. (こんにちは)
Thank you. (ありがとう)
Sorry. (ごめんなさい)
Your Welcome.(どういたしまして)

上記の挨拶の中で、私がラスベガスで最も使った言葉はThank you.とSorry.です。

まず、私が女性だからなのか(あるいは顔面が幼稚だからか)もしれませんが、至る所でお気遣いをいただきました。先に扉を開けて建物に入った方が、後ろの私のために扉を開けて待っていてくれるのです。まだ10mくらいあるのに!!!!!日本でも扉を開けていてもらえるという経験は多くありますが、こんなに長い時間待ってもらったことはありませんでした。

また、些細な順番を譲ってもらったりすることも多かったです。そんなときはSorry.とThank you.をフル活用せねばなりません。タイミングが遅れれば無礼者になってしまいます。日本では割とボーっと歩いたりしているので、アメリカではその辺かなり気を遣いました。英語がわからなくても、笑顔で挨拶するだけで、その場の雰囲気はよくなります。とにかく、笑顔と挨拶は大事。

展示会場の様子です。どこの説明員さんも拙い英語を真剣に聞いてくれました。

コツ2:情報を駆使する

re:Inventを楽しむうえで最も大事なことはとにかく情報を集めることです。ご飯はどこにあるのか、どのセッションは何時に何人くらい並んでいるのか、ノベルティはどこで貰えるのか、穴場なセッションはなんなのか。お土産はどこで買うといいのか、誰か薬をもってないか、今雨が降り出した等々。

広大な会場で生き残るために、最も必要なものは情報です。会場内にも案内板などあったりしますが、特にメイン会場のVenetianは常に人の流入が激しく、案内板にたどり着くのが大変だったり、人混みの中で人の頭しか見えないために案内を見落としたりします。

そんな時頼りになるのは同じ日本からの参加者との情報交換です。事前に日本で、re:Invent参加者向けの勉強会(準備会)に参加して知り合いを作ったり、facebookの日本からの参加者グループに参加したり、ラスベガスの現地で知り合った人たちとグループを作ったり。とにかく情報を手に入れられる環境を作り、自分も積極的に発信しました。

日本からの参加者限定のイベントJapan Nightの様子です。壇上にはAWSジャパンの長崎社長の姿があります。アメリカまで来るほどのパワーの人ばかりなので、参加者同士、仕事の話にも熱が入りました。

コツ3:絶対外さないフレーズだけおさえる

今回初めて海外に行くにあたり一番不安だったのは英語ができないということでした。言葉がわからないために満足に食事すらできなかったらどうしよう、会場に行っても何もわからず、困ってばかりになるのではないかと思っていました。

しかし、意外にも、日本人のダメダメな発音の英語でも案外通じるし、単語が拾えれば相手の言ってることが案外わかったのです。これは、re:Inventがグローバルなカンファレンスであるために、スタッフの方々が、非英語話者の参加者の扱いに慣れてらっしゃったためでしょう。(なお、会場となっているホテル群も観光客慣れしているためほぼ同様の状況でした)ask meと書かれた黄色いTシャツを着たスタッフさんは何十人に話しかけてもどなたもフレンドリーで、親切でした。

実際、会場で切羽詰まったら、英語がダメだろうとなんだろうと話すしかないのです。人で埋め尽くされた広大なホテルのどこかで食事が食べられるはずだが、どこにいけばいいのかわからない。たまに看板に方向を示す矢印と共に「Meals」(食事)と書かれているけれど、その先はどこにいけばいいのだろう。道を聞けそうなスタッフはにこやかに何人も待機してくれています。あなたはなんと尋ねますか?

よかれと思って丁寧に複雑な言い回しをしても、発音がよくないために余計伝わらないと思い、私は場所を覚えるまでの数日はこのフレーズで乗り切りました。

「Excuse me. Where is Meals?」(すみません、食事はどこですか。)

3語文です。3歳児レベル。でも、スタッフの方には十分伝わっていました。Mealsの部分を変えると応用可能です。Meals以外ではShuttle(シャトルバス乗り場)やRestroom(化粧室)、セッション会場名を入れて使うことが多かったです。この他何を伝えるにも、基本的には3語文で乗り切りました。

意外にもコミュニケーションがとれると実感した私は、出発前は無理だと思って諦めていた、「英語でEXPO(ブース出展)をまわってみる」ことにチャレンジしました。しかし、日本語でも意外と難しいコミュニケーションのきっかけをつかむことは英語だとなおさら難しいです。キッカケがない。そこで、絶対に断られない、簡単に会話を始められるフレーズがこれです。

「Excuse me. Can I take a picture?」(すみません、写真撮っていいですか?)

これを言うと、大歓迎でブースに入れてくれるし、こちらも写真に撮ることで後から「このブースに行ったな」とか「この画面わかりやすいな」とか振り返ることができます。もし特に画面とかの掲示がなく、写真を撮るのが難しいブースならこちら。

「Excuse me. Can I have this?」(すみません、これもらっていいですか?)

机上のリーフレットを指しながら言えばスムーズです(リーフレットやフライヤーは発音が悪いと伝わりにくかったです)そもそも第一声がそんな3歳児英語なら、その後特に英語で難しいことを言われることはそんなになかったのですが、中には親切に応対を続けてくれるブースもあります。しかしそこからの会話は難しい…申し訳なさを感じながら、このフレーズを返します。

「I’m sorry.I’m not good at English.」(ごめんなさい。あまり英語はできないです)

第一声から3歳児英語を発していた人間がこう言ってきたら、それを深追いする出展者はほぼいないです。本当は、英語ができれば…もっとちゃんと会話して、製品のことを聞いたり、自分の使用感を伝えたりできるのですが……とりあえず情報収集は上記のフレーズで乗り越えましょう。

次のAWS re:Invent チャレンジャーへ

ここまで読んでみていかがでしたか。もし、貴方が、AWSが好きで、次回re:Inventにチャレンジしたい、けど英語できないし…と悩んでいるならば、是非行くべきです。最新のテクノロジー、圧倒的情報量、グローバルの熱量、そして、同じ製品に関心を寄せる多くの仲間と出会えます。

re:Inventを楽しむために、最低限必要なのは、英語力ではありません(あれば100倍楽しめますが)。最も大切なのは、未知の世界に飛びこんでいく勇気、そして、人とのつながりを大切にすることです。言葉がわからないから、海外にいったことがないから、失敗したらどうしよう、と不安に思って立ち止まってしまうとその挑戦はそこで終わってしまいます。勇気を出して、自分にできることを尽くせば、案外なんでもないことだったりします。時には、うまくいかないこともあるでしょう。いいんです。旅の恥は掻き捨てです。トライアンドエラーでいきましょう。

とはいえ、一人でできることには限界があります。そこで大切になるのは人とのつながりです。自分一人では集められないような情報を貰う、過去の体験談を聞く。それは自分一人では得られない情報です。それに、やっぱり、同じ楽しみを共有する人がいるのは楽しさを倍増させます。レストランに行ってアメリカンなご飯を食べたり、カジノやショーをわいわい言いながら楽しむことは忘れられない思い出になります。元々の知り合いじゃなくてOK。re:Inventには、一人で参加している日本人参加者もたくさんいます。きっと新しい出会いもたくさんあります。

さあ、勇気は出そうですか?ワクワクしてきましたか?

re:Inventに行きたくて仕方ない気持ちの後押しになれたら幸いです。でももしまた不安になったらこの記事を思い出して、読んでみてください。

re:Inventのお決まりで壁一面の巨大な黒板に、参加者が自社の名前や、製品の名前を書いていきます。tdiの名前を書き込むことができました。

最後に・・

今年の『re:Invent 2020』は、全世界での未曾有の事態の只中にあり、完全オンラインでの開催となりました。来年は、再び海外カンファレンスが復活することを祈って、この記事を締めくくりたいと思います。

お問い合わせ先

執筆者プロフィール

Izumi Rika
Izumi Rikatdi デジタルイノベーション技術部
物理からクラウドまで幅広く手掛けるインフラエンジニア。
最近はどっぷりAWSに浸かっています。好きなAWSサービスは「CloudFormation」
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