外観検査におけるAI技術活用

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外観検査とはその名の通り、部品や製品の品質を確認・保証するために傷や汚れなどがないか、外観を検査するものです。抜き取り、破壊検査を必要とする部品・製品などもありますが、全数検査が必須であるような部品、製品の場合、非接触、かつ、非破壊で検査可能である外観検査は有効な手段となります。

現在、製造業においてAI画像認識技術を使い、従来は人力で行っていたこの外観検査を自動化することに注目が集まっています。本記事では、製造業における課題やAI技術の活用について紹介していきます。

製造業における現在の外観検査の課題

ニュースでもよく話題に挙がりますが、日本は少子高齢化による深刻な人手不足となっています。製造業でも同様で、ビジネスにも影響が出てきています。特に中小の製造業では、技術を持ったベテラン社員が退職してしまい技能人材の確保に苦労しています。
(参考:経済産業省資料「製造業における人手不足の現状および外国人材の活用について」)

製造業における検査は大きく以下の2つの手段があります。

  1. 人の目による目視検査
  2. センサーや画像データを元にしたルールベースの自動検査

現在の主流はいまだ1.の「目視検査」です。人の主観による検査であるため、検査レベルが検査担当者に依存し、品質を一定に保てないという課題があります。また、人材の確保や技術継承のための教育時間も必要となり、それに伴う人件費も発生します。更には人が連続で検査できる時間、集中力にも限界があるため、検査員が検査できる数が機械に比べ少なくなります。大量の製品を検査しなければならない場合はより多くの検査員が必要になります。

一方、2.のセンサーや画像データを元にした自動検査の主流は「ルールベース」を用いた検査システムになります。「ルールベース」を用いた検査には、人が予め不良とする大きさ、形、色などの特徴データを収集、集計、登録する必要があります。例えば、ある製品の“傷”を検知したい場合、その傷の画像データを収集し、大きさや形、色などを数値化して、検査システムに登録します。これは非常に大きな手間がかかるという課題があります。更にそもそも工場では不良品を作ることを目的としていないため、不良品の発生率は低く、傷などの不良データが揃わないという問題もあります。また、不良データを揃えることができたとしても、検査の際には、そうして事前にシステム登録した不良パターンしか検知できず、初めて発生するような不良パターンは見過ごされる可能性があるという課題もあります。

【現在の検査方法と課題】

  検査方法 課題
人の目による目視検査 ・検査レベルが担当者に依存。品質が一定に保てない
・人材確保、育成にコスト、時間がかかる
・検査員が検査できる検査数の限界
センサーや画像データを元にしたルールベースの自動検査 ・多くの不良データを収集、登録する必要があり手間もかかる
・予測していない欠陥は検知できない

これら人材不足、および、既存の外観検査に関する課題を補うため、AIの画像認識技術を用いた外観検査ソリューションに注目が集まっています。

外観検査に用いられるAI技術

ここで外観検査に用いられる現在のAI技術を見ていきたいと思います。

AI技術の一つとしてディープラーニング(深層学習)があります。既存の画像認識手法や機械学習手法と比較して、ディープラーニングの利用メリットとして「特徴を自動的に抽出してくれる」ことが挙げられます。例えばある製品の傷を検知したい場合、従来の画像認識手法であればその傷に関する大きさ、形、色などの特徴を人間が設定する必要がありますが、ディープラーニングでは、(人が、どれが傷なのかを指定する必要はありますが、)それらの特徴を自動的に抽出、判断してくれます。これにより人間の手間をかなり省くことができます。

機械学習の方法として「教師あり学習」「教師なし学習」があります。(更に「強化学習」という学習方法もありますが今回は割愛します。)

教師あり学習(Supervised Learning)

学習データに正解(教師)ラベルを付けて学習する方法です。例えば画像認識であれば、画像に写っている物体(犬や猫など)を指示して学習させることで、新たな未学習の画像を分類することができます。また1枚の画像に写った物体を検知するようなことも可能になります。

この「教師あり学習」を外観検査に利用した場合、検査対象品の不良箇所(の特徴)を学習させてモデルを構築し、実際の検査でそれら不良を検知するということが可能になります。

教師なし学習(Unsupervised Learning)

正解ラベルなしで学習する方法です。データの特徴を学習し、それらの特徴をAIが分析して、いくつかのグループに分けること(クラスタリング)などが可能です。

外観検査での異常検知に関しては「オートエンコーダ(Auto Encoder:以降AE)」という技術が使われることが多いようです。AEはエンコーダ(Encoder)とデコーダ(Decoder)からなります。エンコーダで入力画像の次元を圧縮し、デコーダでは圧縮されたデータを元の画像に復元する技術です。

AEの学習済みのモデルは、入力画像を再現するように構築されているため、デコーダで復元される画像は入力画像と似た画像となります。ここで不良を含んだ画像を入力すると、デコーダは良品学習で学んだ重み等で出力画像を復元するため、不良部分が薄れた画像(良品に近い画像)が出力されます。この出力画像と元の入力画像を比較し差分を取ることで、不良箇所の検知が可能になります。

(引用:Improving Unsupervised Defect Segmentation by Applying Structural Similarity To Autoencoders)

この「教師なし学習」およびAEは、不良品をそろえることが難しい製造業界では大きなメリットがあります。また、不良の特徴を学習させるのではなく、“良品の特徴から外れた箇所”を検知することができるようになるので、想定していなかったような不良も検知できるようになります。

tdi AI外観検査ソリューション(Cognex社 VisionPro Deep Learning)紹介

ここからはAI技術を活用した弊社の「AI外観検査ソリューション」のご紹介です。

「AI外観検査ソリューション」はCognex社のVisionPro Deep Learningを採用しています。

VisionPro Deep Learningとは

VisionPro Deep Learningは製造業向けに設計、開発、パッケージ製品化されたディープラーニング画像解析ソフトウェアです。パッケージ化されているので、最低限のディープラーニング知識があれば運用可能です。また検査モデル(AI)を学習させるのにプログラミングは必要ありません。従来のルールベースによる検査では不良に関する様々なデータを大量に登録する必要がありましたが、その手間も削減できます。
当社のAI外観検査ソリューションはこのソフトウェアを核としています。

AI外観検査の4つのツール

次に主機能である4つのツールを紹介します。

  1. 【Locate】対象検出・位置決め
    対象物や対象物の特徴を見つけます。例えば検査ライン上に流れてくる製品が、撮影するカメラの画角内で一定の場所、角度で撮影することが難しいような場合、本ツールで、検査対象物を検出、正位置に補正することが可能です。検査対象物のみを抽出することで次の【Analyze】の精度がより高まります。
  2. 【Analyze】不良の検出
    画像内の不良を検知します。2つのモードがあります。
     ⅰ.Unsupervised(教師なし学習)
      良品の画像を使って学習します。良品の特徴から外れた箇所を不良として検出します。
     ⅱ.Supervised(教師あり学習)
      不良品の画像を使って学習します。学習させた不良品の特徴を持つ箇所を不良として検出します。
  3. 【Classify】対象の分類
    画像を複数のクラスに分類します。【Analyze】と組み合わせることで、【Analyze】で検知した不良を傷や打痕など分類することが可能です。
  4. 【Read】文字の読取
    文字の認識が可能です。お客様独自のフォントなども学習できます。

tdi オリジナルテンプレートアプリケーション

実際の工場製造ラインで検査を行う場合、検査対象をカメラが撮影、その画像を保管したタイミングで検査を実行、検査結果をディスプレイなどに表示、および排斥装置と連動して不良品の排斥を行う。のように撮像装置、排斥装置との連動や検査結果表示が必要となります。弊社ではそれら機能を実装した独自のテンプレートアプリケーションも準備していますのでPoC、PoVの際にも素早く対応できます。もちろんお客様のご要望に応じたカスタマイズも可能です。
 

その他、本AI外観検査ソリューション導入時、お客様への操作方法の教育や、AIモデル構築(AI学習)において必要なディープラーニングの知識に関してもサポートします。

さいごに

外観検査におけるAI技術活用に関する話題と弊社のAI外観検査ソリューションの紹介をさせていただきました。

日本国内のAI技術活用は世界と比べて遅れをとっていると聞いています。しかし、新内閣でも「デジタル庁」の新設が計画され、国内のデジタル化促進が検討されています。日本国内のAI技術の活用も加速していくと考えられます。

当記事でAI外観検査にご興味をお持ちいただけましたら、ぜひ弊社へご連絡お願いします。

参考書籍

『外観検査の実務とAI活用最前線 ~目視検査のコツから自動化のポイント・人工知能の導入まで~』
発行:株式会社 情報機構

『機械学習プロフェッショナルシリーズ 画像認識』
著者:原田達也 発行所:株式会社 講談社

お問い合わせ先

執筆者プロフィール

Kesamaru Hajime
Kesamaru Hajimetdi AIビジネスコンサルティング部
入社してからは主にお客様オンサイトでのシステム開発、保守に従事してきました。
現在は、AI外観検査ソリューションを中心に担当しております。
入社20年を超えてからのAI分野への挑戦、頑張っています。
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