ITSMSのPDCAサイクルを回す方法

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私はお客様企業内で、ITサービスマネジメントシステム(以下、ITSMS)事務局をお手伝いしております。その中で、実際にITSMSのPDCAサイクルを回していく難しさを、現場担当者として痛感しました。今回はそのPDCAサイクルを上手く回していくために行った改善策について、簡単にお話したいと思います。

ITSMSとは

私のお話をする前に、まずITSMSについて確認しましょう。一般社団法人情報マネジメントシステム認定センターは、ITSMSをこう説明しています。

ITSMSとは、サービス提供者が、提供するITサービスのマネジメントを効率的、効果的に運営管理するための仕組みである。

情報マネジメントシステム認定センター「ITSMSとは」より

ISO/IEC 20000とは

ITSMSを行うときの国際規格としてISO/IEC 20000があります。日本品質保証機構は、ISO/IEC 20000を以下のように説明しています。

組織が提供するITサービスの内容やリスクを明確にし、サービスの継続的な管理、高い効率性、継続的改善を実現するための枠組み

(一般社団法人日本品質保証機構「ISO/IEC 20000(ITサービス)」より)

このISO/IEC 20000は、「組織の状況」「リーダーシップ」「計画」「サービスマネジメントの支援」「サービスマネジメントシステムの運用」「パフォーマンス評価」「改善」などから構成され、ITSMSの確立・実施・維持・継続的な改善を狙っています。ITSMSを実行するには、ISO/IEC 20000に則ることが求められるのです。

ISO/IEC 20000におけるPDCAサイクル

Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字をとったPDCAサイクル。私はある現場で、ISO/IEC 20000を運用していくためのPDCAサイクルを、以下のように設定しました。

  • Plan:トップマネジメントからトップダウンのもと方針を決定
  • Do:現場の負担にならないよう、方針にそった計画の実行
  • Check:月次報告による状況の報告
  • Action:改善を見届けて次へ

ただし、このサイクルが実際には上手く回らないことがありました。実際に私が遭ったケースを2つお伝えしましょう。

ケース1:障害報告を隠蔽してしまう

障害を減らすという目標を設定したのはよいのですが、障害発生を必要以上に大ごととして取り扱うことにより、現場担当者が障害報告を上げずに隠蔽してしまうケースがありました。

改善策:「障害は必ず発生する」という前提に意識を変える

「ITインフラ部門において、運用フェーズで稼働しているものは、人員の交代、経年劣化、OS、機器などの変更などによって障害が必ず発生する」という認識を、個別、あるいは集合教育、e ラーニングなどによってマネジメント層、現場担当者に浸透させました。そして、障害の発生よりも、それを隠蔽してしまうことが問題であるということを意識づけました。

また、全社的に品質を上げていけるということを現場担当に意識してもらうため、障害発生を減少させる為の改善策を部門をまたいで共有するようにしました。

ケース2:現場担当者が忙しくて改善活動ができない

日々運用を行っている現場担当者が忙しく、改善活動のためになかなか時間をさけない状況でした。

改善策:簡易変更用のフローを設ける

変更作業申請のフローを確認すると、作業前レビューや事前承認などプロセスが多く、実際の変更作業以外に時間がかかることがわかりました。

そこで、簡易変更用のフローを導入しました。変更リスクが低く、手順書も確定している変更作業に限り、作業レビューと事前承認不要で変更作業を実施できるようにしたのです。日常的に発生する簡易変更作業の申請を簡略化したことで、本来時間を使いたかった問題の解決に、より多くの時間をかけられるようになり、IT運用品質の改善に繋がりました。

最後に

このように、ITSMSのPDCAサイクルを回すにあたって、以下の点を私は重要視してきました。

  1. 障害を隠さず、確実にエスカレーションを実施できる職場環境づくり
  2. 現場担当の現状を把握し、改善活動を行いやすい運用プロセスの構築

どんな会社、部署においてもこのポイントは絶対に必要となると思いますので、是非ともお役立て頂ければ幸いです。

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執筆者プロフィール

Shibata Yoshinori
Shibata YoshinoriTDISS パナソニックサービス事業部
インフラ運用一筋、野球大好き関西のおやじです。
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