チャットボットのトレーニングとその秘訣――もしもチャットボットが受験生だったら

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「チャットボット」は、対話型インターフェースで人に代わって自動応答してくれるプログラムで、すでに多くのチャットボットが業務効率化やサービス向上に役立てられています。 ここでは、チャットボットの肝である対話能力に注目して、チャットボットのトレーニングとその秘訣についてご説明します。まず、秘訣を知ることで、チャットボットを活用するきっかけになればと思います。

チャットボットのトレーニングは受験勉強と一緒

まずは、チャットボットのトレーニングとは何かを説明します。分かりやすいように、大学受験生の学習方法に合わせて、トレーニングについてまとめたものが下図です。

受験生は、目標を達成するために、試験の出題科目や範囲を重点的に学習し、高得点を目指して過去問題をたくさん解きます。受験生と同じく、チャットボットも学習が必要で、その学習を一般的に「トレーニング」と呼んでいます。また、トレーニングで必要な学習教材のことを「トレーニングデータ」と呼びます。

チャットボットのトレーニングデータは過去問題集

続いて、トレーニングに必要な学習教材「トレーニングデータ」とはどのようなものなのかを説明します。

受験生が過去問題集を教材として学習するのと同じように、チャットボットにも過去問題集が必要です。チャットボットにとっての過去問題集は、「過去にユーザーから質問されたこと」を集めたものとなります。つまり、「過去にユーザーから質問されたこと」を集めたものが、トレーニングデータなのです。

受験生が過去問から出題される問題の傾向を把握するのと同じく、チャットボットのトレーニングにおいて、ユーザーが質問する内容の傾向を知る必要があります。そのため、「過去にユーザーから質問されたこと」を集めることが、とても重要です。しかし、その重要性を軽視して、トレーニングが思い通りにいかず、失敗するケースがあります。

失敗ケースとして、「過去にユーザーから質問されたこと」をトレーニングせず、チャットボットの設計者や開発者がチャットボットに答えさせたい内容を集めてトレーニングすることがあります。これを受験生に置き換えると、参考書の予想問題や応用問題を解いているイメージで、本来は先に過去問を一通り解き終えてから取り組むべきでしょう。チャットボットも同様に、過去問をしっかり学習するために、まず「過去にユーザーから質問されたこと」をトレーニングデータとすることが重要なのです。

トレーニングの秘訣は過去問題集を充実させること

トレーニングの効果を大きく左右するのは、トレーニングデータです。

効果的なトレーニングデータを作るためのポイントを紹介します。それは、チャットボットに実際に質問されたものを集めることです。スマホから入力するときと、パソコンのキーボードで入力するときでは、使う単語や漢字変換、テキストの長さなどが異なるように、デバイスやUIなどが違うだけで、ユーザーの質問は大きく変化します。そのため、実際にチャットボットサービスを、運用する際と同じ環境で集めた「過去にユーザーから質問されたこと」を、トレーニングデータにするのが効果的なトレーニングデータを作るポイントです。

もし、実際のチャットボットと同じ環境がまだ準備できていない場合、近い環境で集めた「過去にユーザーから質問されたこと」をトレーニングデータにすることも可能です。しかし、なるべく早く実際と同じ環境を整えるべきでしょう。

継続こそ力なり

受験生とチャットボットの学習方法はとても似ており、チャットボットのトレーニングは、ポイントを知ればそう難しくないということが分かっていただけたかと思います。しかし、受験生には合否というゴールがありますが、チャットボットは世の中に存在し続ける限り、最終的なゴールはありません。ユーザーが質問する内容は様々な要因によって、日々変化していきます。その変化に対応するために、チャットボットのトレーニングは継続していく必要があるのです。

質問を集めてトレーニングデータを作り、チャットボットをトレーニングし、チャットボットを公開してユーザーに利用してもらう。利用してもらった際に、ユーザーが実際にチャットボットへ質問した内容を集めて、またトレーニングデータを作る。というサイクルを継続していくイメージです。このサイクルを繰り返すことで、チャットボットは育っていくのです。

ぜひ、上手にトレーニングして優秀なチャットボットを育ててください。

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執筆者プロフィール

Michizoe Yui
Michizoe Yuitdi AI・コグニティブ推進部
IBM Watsonを活用したチャットボットサービスを中心に尽力しながら、新たな人工知能の可能性を模索しています。
楽しく仕事をするためにいつも笑顔を心がけています。
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