リスク管理のさらなる高度化へ 「三線モデル」の構築とIBM OpenPagesの導入で、経営に貢献するERM体制を再構築

会社情報
日本精工株式会社(以下、NSK)は、1916年に日本で初めて軸受の量産に成功しました。以降、軸受に加えて自動車部品や精密機器関連製品などさまざまな製品を世に送り出し、100年以上にわたり産業の発展に貢献しています。
会社名:日本精工株式会社
本社:東京都品川区大崎1-6-3 (日精ビル)
URL:https://www.nsk.com/jp-ja/
創立:1916年11月8日 (大正5年)
事例ポイント
IBM OpenPages導入の背景
- コロナ禍で現地現物の確認が困難となり、改めてリスクやインシデントに関する報告の重要性への意識が高まる。
- 全社的なリスク管理(ERM)に係る外部の要請が強まる一方、社内ではリスクやインシデントの責任所在や、経営にとって真に重要なリスクの特定などに関する課題が存在。
IBM OpenPages導入の効果
- 導入の効果・三線モデルに基づく新たなERM体制を、事業・機能・地域の各本部からなる3次元組織下で構築し、IBM OpenPages上でつなぐ。
- 特に重要なリスクやインシデントをダッシュボードで常時可視化することで、これらへの対応状況を従来よりも容易にモニタリングできる環境を実現。
- リスクやインシデントの性質に応じて、管理責任を持つべき部門の選定をアシストし、責任の所在が常に見える体制を構築。
導入ソリューション
リスク管理体制を見直すきっかけとなった背景詳細
NSKは2004年に、当時の会社法上の「委員会等設置会社」への移行に伴い、法定の監査委員会を設立したことをきっかけに、グローバルなリスク報告体制の基礎を築いた。さらに2007年頃にはJ-SOX(内部統制報告制度)への対応として、財務報告の信頼性を確保すべくリスクアセスメントに基づく管理体制を強化した。しかしながら、それ以降は大きな制度変更をせずに、全社的なリスク管理体制の運用が継続していた。
この長期的な運用を見直すきっかけの一つとなったのが「コロナ禍」である。移動が制限され、NSKが重視する「現地現物」の確認が困難となったことで、現場から送られてくる報告の重要性が一気に高まった。現地に赴かずとも実態を即座に把握できるよう、リスクやインシデントの状況がよりわかりやすく可視化されることが不可欠となり、報告体制がどうあるべきかの議論が活発化した。さらに変革を迫る3つの大きな外部環境の変化があった。それらは「有価証券報告書でのリスクへの対応状況の開示」「コーポレートガバナンス・コードによる積極的なリスクテイク」、そして「IIA(内部監査人協会)が提唱する三線モデル(執行と監査の分離)」である。
一方、社内では既存の体制や運用では、リスクや発生したインシデント対応における責任の所在や対応状況の明確さ、経営にとって真に重要なリスクの特定に関する課題があった。また、ERM体制そのものが実質的に監査部門主導で構築・運用されていたことも、解決すべき課題となっていた。現場においても、Excelのリスクアセスメントシートを配布・回収して集計する作業やデータの管理状況を踏まえ、現場と事務局双方の負担軽減や実効性の高いERMへの刷新が急務となっていた。

日本精工株式会社
経営企画本部ガバナンス管理部 リスク管理グループ
グループマネジャー
工藤 朝道 様
三線モデルを体現する新体制とシステム選定
2023年4月、内部監査部門と経営企画部門が連携したプロジェクトが発足。NSKは、新たなERMの目的を、全社的なリソースを効果的に活用し、NSKグループの企業理念の実現と経営目標の達成に関する不確実性の影響を管理することと設定した。この目的のもと、体制と業務フローの設計、およびそれを具現化するためのツール選定を並行して進めた。
まず体制面では、「監査部門は監査活動に専念し、リスクのコントロール(執行)から外れるべきだ」という共通認識のもと議論を重ねた。その結果、執行(第一線・第二線)と監査(第三線)が明確に分離された。また、執行部門も、リスクに晒され具体的なリスクへの対応を行うべき部門(第一線)と、その活動をモニターし必要に応じて指示・命令を行うことでリスクのコントロールに責任を持つ部門(第二線)に分けた。「三線モデル」を体現するERM体制を構築し、この体制の下、どのようなコミュニケーションラインあるいはレポーティングラインが最適かについて、ERMの目的から検討を繰り返し、社内規程化に至った。
この新体制を支える基盤として、GRCシステム4製品を比較検討し「IBM OpenPages」を採用した。決め手となったのは、設定における自由度である。事業軸・機能軸・海外地域軸が交差するNSKの「3次元組織体制」において、柔軟な閲覧権限設定やワークフロー構築が可能であったことが、選定の大きなポイントとなった。
また、選定ポイントの一つであった導入パートナーのTDI株式会社(以下、TDI)については、日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、IBM)を通じてその存在を知るに至った。NSKは、TDIのIBM各製品の導入実績を評価。さらに、NSKの課題に真摯に向き合い、プロジェクトの成功に向けて献身的に伴走する「熱意」と「誠実な姿勢」が決め手となった。導入後も、TDIはNSKの業務や文化を深く理解し、実現したいことを汲み取ってくれる相談しやすいパートナーとして強固な信頼関係を築いている。
IBM OpenPagesの導入効果
最大の導入効果は、議論を重ねて設計した新たな体制と業務プロセスが「IBM OpenPages」によって具現化され、実効性のある運用体制としてシステム上に確立されたことである。NSKは「誰が・どのようなリスクやインシデントに責任を持ち・どう報告するか」というルールと業務プロセスをIBM OpenPages上に反映することで、新しいERM体制が安定的に稼働するための土台を整えた。
具体的には、リスクカテゴリーごとにリスクの責任部門を設定し、責任の所在を明確化した。そしてIBM OpenPagesが特定のリスクやインシデントを適切な責任部門へ自動的に紐付けて報告をアシストする。これにより、その報告がされている各ケースの対応が始まったのか、あるいは途中なのか等、リスクの責任者や対応状況が可視化され、実効性の高いモニタリング体制を確立している。
あわせて、影響度と発生可能性等で評価されるリスクレベルにより、経営レベルで議論すべき重要リスクを厳選しており、IBM OpenPagesがそのレベル別かつ緻密なリスク管理を支援している。さらに、ダッシュボード上で重要なリスクやインシデントに関する報告を簡単に共有・可視化できるようになったことで、従来は重要度に関わらずCEO/CFOまで上がってしまう傾向にあった報告に、明確なメリハリが生まれた。経営に重要なリスクやインシデントが常に見えるようになり、管理状況が追いかけやすい環境となった。
また、従来はExcelで行っていた「リスクアセスメント」と、内部システムによる「報告・モニタリング」が分断されており、データの転記作業が発生していた。しかし、IBM OpenPagesの導入により、リスクアセスメントから報告・モニタリングまでが一連の業務となり、転記作業が削減された。あわせて、ダッシュボードによる管理状況の可視化や、翻訳機能の活用によるレポーターの負荷軽減など、業務効率化を達成している。
今後の展望
今回のプロジェクトにより、グローバルなERMを支える基盤がひとまず整ったことは確かであるが、課題は少なくない。
例えば、現場にとって不都合なインシデントであってもより早く報告されるような健全なリスクカルチャーのさらなる醸成、変化の激しさが増すばかりの経営環境に合わせて、戦略リスクの領域でERMのさらなる高度化を図っていくことなどである。
また、ERMの質をさらに高めるためのAI活用にも大きな期待を寄せている。具体的には、蓄積された膨大なデータからリスクやインシデント、それらへの対応状況の全体像をAIが要約し、経営層への報告作成を支援すること。さらには、将来的に世界中の不確実な外部情報とNSKの戦略・体制・ルールとをAIが照らし合わせ、「自社への具体的な影響」を分析・提示できるパートナーへと進化することを望んでいる。
こうした中、NSKの業務とシステムを深く理解するTDIには、操作性の追求やAIなどの新機能活用の面から、これまで以上の伴走支援を期待している。
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